前回のWardley Mappingを調べた続き
uga-box.hatenablog.com
Wardley Mappingは以下の孫子の兵法を基に作られたビジネス戦略のためのツール
- 目的…道徳的義務、行動範囲、なぜそれを行うか、他の人があなたをフォローする理由
- 風景…競争している環境や部隊の位置、風景の特徴、行く手を阻む障害物
- 気候…環境に作用する季節やゲームルール、競合他社の行動
- 教義…普遍的な原則であり、直面する状況に関係なく機能するように見える一連の信念
- リーダーシップ…自分の目的、状況、気候、能力を考慮して選択する
1.目的と2.風景は前回調べたので、今回は3.気候から4.教義について調べる
気候
ビジネス戦略における「気候」とは、自分の行動に関係なくマップを変えてしまうものである
マップとは前回調べて作り上げた「風景」にあたるもので、以下のような図を指す
これは「オンラインフォトサービス」の2005年のときの風景であるが、この風景は一生このままではなく「気候」によって変化するよ!ということがここで伝えたいことである
変化とはマップ上でいうコンポーネントが左から右に移動していくことで、未知の発想が技術の進歩により特定の用途で作れるようになり、特定の用途だったものが商品化し、やがて誰でも作れる世の中に進化していくことである
この変化を捉えていないとビジネスの優位性が失われる可能性がある
気候の特徴
自分の事業の立ち位置(風景)を変えてしまう気候にはいくつかの特徴があるという
例えば
- すべてのコンポーネントは進化する
- すべては進化はするが、すべてが生き残るわけではない
- ある特定の変化にうまく機能したスキーム(アジャイル、リーンなど)が、別の変化にも機能するとは限らない
- 進化することは他社との差別化がなくなっていくことだが、進化することによって新しいイノベーションを可能にする(たとえば標準化された電力供給は新しいイノベーションを生み出した)
- 進化は効率を高め、効率の向上は新たな価値源を生み出す
- 進化には追随するしかない(カルテルを形成して新規参入を阻止できない限り、進化をとりいえれた他社が必ず現れる)
- 過去の成功が惰性を生む(今のモデルが衰退することが明らかになるまで、手を変えようとしない)
など
全ては書ききれないため、詳しくは記事を参照してほしい
medium.com
このような気候変動の特徴を念頭に、マップを眺めながら予測を立てる
2005年当時にWardley氏が予測できたことの例
オンラインフォトサービスについて
- オンラインフォトサービスは、富を生み出すプロダクトにさらに移行していた
- 他社が競合するオンラインフォトサービスを作ることがはるかに簡単になる
- 投資をするか、新しい角度や新しい差別化要因を見つける必要があった
コンピューティングについて
- コンピューティングはよりユーティリティになる可能性がある
- 今は限られた企業しかないコンピューティング技術が、誰でも簡単に構築できる時代(今で言うとクラウド)がいつかはくるだろう
- おそらく最初はクラウドコンピューティング化は抵抗があるであろうが、進化し企業は導入を迫られることになるだろう
- コンピューティングに起こることは、コーディングプラットフォームにも起こるだろう
- 構成、セットアップ、インストールなどの「ヤクの毛を剃る」タスクはなくなるだろう
- コーディングしてデプロイするだけで済む未来の世界が待っているだろう
- コーディングしてデプロイするだけで済む未来では、コンポーネント間の関係は同じでもコンポーネントの提供方法が異なるだろう
- あらゆる種類の新しいイノベーションを実現したサービスが迅速に作成できるようになり、何かはわからないが多くの新たな価値の源が存在するだろう
このように予測を立てていく
予測をたてたら次はビジネスにおける「教義」に取り組むことになる
教義
孫子曰く、「敵の側面を攻撃するには、敵が既知の位置にいる必要がある」
先述した通り、気候変動は自らの手で止めることはできないが、予測できるものであった
次に、ビジネスにおいて一般的に有用とされる原則を「教義」として取り組み、予測を立てた気候変動に対処できるようにする
全ての原則は網羅できないので、いくつかの原則を挙げ、説明が必要なものは補足する
原則:ユーザーのニーズに焦点を当てる
私たちが生み出すあらゆる価値は、他者のニーズを満たすことによって生まれる
ユーザーのニーズはマップ全体のアンカーとなるため、最初にユーザーのニーズを定義する必要があるということ
具体的には
- どのユーザーについて話しているのか(顧客、業界の規制当局、株主、従業員、さらには自分)
- 組織がユーザーと行ったトランザクションはどのようなものか
- トランザクションを操作するときのカスタマージャーニーはどのようなものか
- toBの場合はその企業の状況はどうか
など
ただ、ディスカッションとデータ収集で見つけた「ニーズ」は時に間違っている可能性があるので注意が必要なことはよく知られている
例えば有名な話で、フォード社が車の開発当初にユーザーにヒアリングをすると「私たちは車というものは別に欲しくないです。私たちはより速い馬が欲しいです!」という声が返ってきた
このようにコンポーネントが進化の段階の間を移動している時、ユーザーのニーズはレガシーな考えに固執している可能性があるので注意が必要である
原則: 共通の言語を使用する
割愛
原則: 透明性を保つ
割愛
原則: 前提条件に異議を唱える
ユーザーのニーズに焦点を当て、マップを使用して共通言語を作成し、それを組織内で透過的に共有しても、それに異議を唱える人がいない場合はほとんど意味がないとのこと
最近、デビルズ・アドボケートという会議のメンバーの誰かに、敢えて対立する意見や視点を提供する役割を与えるコミュニケーション手法を知ったのでそれに近いかもしれないと思った
www.seminar2b.site
原則: 重複と偏りを取り除く
原則: 適切な方法を使用する
適切な方法を使用するには、小さく考える必要があるという話
ここから組織も適切な小ささが良いというチーム編成の話し(AmazonのTwo Piazza Teamのような話)になってきて面白いのだが、消化しきれていないので別のブログにまとめたい
詳しくは記事を参照
medium.com
感想
これで「気候」と「教義」を理解したことになるが、肌感覚的にこれらを知ったからといって使いこなせるものではなく、実際に事業に向き合って頭を捻って失敗しながら体得していくんだろうなという感想を持った
とりあえずやってみようと思う